こちらに来て初めての実現プロジェクトが進んでいます.ここまで本当に長かった....
幾つも幾つも,最初の案を作る段階で終わったり,それなりに進んでいたのに止まったり.
ですので,ただ実現するというだけでも,とても嬉しいものです.
現在モックアップ製作中で,先日見に行ってきました.
主に主体鉄骨と木の床を見たのですが,ぱっと見て,あらいな,と.
よく言えば,手作り感がある,人間が作っているのだな,という感じとも言えるかもしれません.
ひとつには,今回は特殊な条件が入っていて,大きな部材や現場溶接を使えないため,
ボルト接合が多くなった所為もあるとは思います.
ただ,やはり作り方の文化的な違いもあるように思えます.
日本の業者さんでしたら,事前に検討してなるべく出戻りや失敗が少ないように作るところを,
取敢えず作ってみて,だめだったら直す,という傾向が強いです.
そう言えば,以前スペインのプロジェクトに関わらせて頂いた時に
SRC造の円柱というのがあまり経験がないということで,モックアップを作ってもらったのですが,
その時も,モックアップ後の結論としては,
本番でも,一度打ってみて型枠を外して,ジャンカが多くてだめだったら壊して作り直すよ,
ということになって,大変驚いたのを思い出します.
それはそれで,1:1の模型でスタディしているようなものなので,
空間の気持ちのよさ,のようなものは確かに出しやすくなります.
逆に,継接ぎな感じが出てしまうところもあるので,
抽象的でぴたっとした高精度なものは作りづらくなります.
特に,見えない所まできれいに作る,ことにコンセンサスを得られづらく,
時として張りぼてになってしまうのではないかと懸念もされます.
(特に,私は往々にして見えない部分となる構造の設計者なので,気になります.)
昔,大好きな構造設計者の方に,
スイスのコンクリートは何故こんなにきれいなんですか,と尋ねた時,
現場に足しげく通うからだよ,
と仰っていて,今一つぴんとこなかったのですが,
日本に比べれば事前の検討が少なめなまま現場でものづくりをしているので,
足しげく通わないときれいにならない,
という意味なのかもしれません.
そもそも,見えない場合の構造を何故美しく作らなければならないのか,
そこを突き詰めた時にやはり最終的な空間として違うものができてくると私は信じていますが,
それを実物で検証・証明していくより他はないということなのでしょう.
材料のものとしての質感や,色,生きた空間としての質,
そういったことに関して,
まだまだ学ぶことがありそうです.
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