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5月にオープンしたCentre Pompidou Metzを見に行きました.


まずは建築のことを.

設計者はShigeru Ban + Jean de Gastines.
全体としては,4層の美術館です.延床面積10700m2,展示空間は5000m2.
7mx15mx80mのコンクリートの細長い展示空間が宙に交差しながら浮かび,
その全体を集成材グリッドシェル+膜の局面屋根が蔽っています.
(一部穴を開けて飛び出しています.)
最高高さ77m.

屋根の平面形状は六角形ですが,起伏している為あまりそれを感じさせません.
それぞれの辺に平行に(つまり3方向に)集成材のグリッドシェルがかけられています.
約440mmx約140mmの集成材を2枚300mm程度の間隔をあけて組み合わせ,
それらを高さ方向にずらして配置することでグリッドを形成しています.
この間隔を保つためにスペーサーが噛まされ,交差部はボルトで回転を許容しながら留められています.
これらの梁はCNCでカットしてパーツを作り,総足場の上現場で組み合わせたそうで,
準備に10か月,組み上げるのに4か月かかったそうです.

屋根の仕上げはPTFE膜(太陽工業)です.透過率は15%.総面積8000m2.
今回は見られませんでしたが,夜景でグリッドシェルが膜に浮かぶ様子は写真を見るときれいなようです.


建物の第一印象は,仮設のパビリオンみたいだな,ということでした.
実際に見る前はもっと繊細なメンバーでやわらかにつくられているのかとイメージしていたのですが,
案外がっしりしたメンバーでピッチも思っていたより大きいものでした.
勿論細かくすればするほど手数も増えるでしょうし,
形状が力学的に決められたものではないので,あまり柔らかいと形が保てないのかもしれません.
力学的にいい形だけがいいということでもないでしょうので,諸々の兼合いの問題かとは思います.
集成材の節が目立ったのとボルトの処理を割と荒く見せていたのと
屋根の膜仕上げ及び壁材に用いているポリ塩化ビニルの質感で
より仮設感が高まっているようにも思えます.
ポンピドゥだけに展示内容が既に世に広く知られている名作揃いだったのですが,
アジア美術館のようなものだったらもっとマッチして感じられたのかもしれません.
ただ,パリのポンピドゥセンターだって最初はこんな仮説的な,と言われただろうことを想像すれば,
まさにポンピドゥらしい実験精神,と言えるのかもしれません.

また,屋根を除いた建物の構成が,動線などは違いますが,先日観たVitraHausに近いのにも驚きました.
寡聞の所為かも知れませんが,美術館というと,ひらたい大空間を区切って使うことが多く,
最近では一作品一空間,という贅沢なものもたまに見られますが,
細長い空間や,縦に積み重なるものは,(SANAAのNew Museumはまさにそうですが)
案外珍しいのではないでしょうか.
VitraHausはショウルームなのですが,見たばかりだったということもあって,
屋根との対比の為に,展示空間の外壁は白じゃない色でも面白かったかもしれないな,と.


PompidouMetz02.jpg  


PompidouMetz04.jpg


PompidouMetz05.jpg


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次に展示のこと.

中ではChefs-D'Oeuvre という展覧会が開催中でした.
この言葉の意味が「傑作」であるということすらわかっていなかったのと
殆どの展示にはフランス語中心の解説しかついていないので,
キュレーターの方々の意図などは考えずに作品だけ楽しむことにしました.
しかし,展示の内容の充実度は流石ポンピドゥと言わせるものでした.
デュシャンの自転車の車輪(Rout de Byciclette)や,
長いことポスターを張っていたマチスの赤い部屋の本物が造作なく展示されていた時には眼を疑いましたが,
マンレイもブランクーシもイヴクラインもピカソもルオーも,惜しみなく展示されています.
圧巻.4層分あるだけあって,かなりのボリュームです.
これで7ユーロは安すぎます.

また面白かったのは展示の仕方で,
2階の展示室の途中に穴の開いた壁が立てられており,
壁の穴を通して作品のデータを知ることができるようになっていました.
こうすると,暗い場所で映像も流せるし,作品自体を煩雑なデータが邪魔することもありません.

建築関係の展示は,フランスの20世紀以降の美術館特集でした.
ゲイリーはバーゼルのノヴァルティスキャンパスに似た形状のものをフランスにも計画しているようです.
フランスにも沢山の美術館があり,また計画されているのですね.


PompidouMetz06.jpg



ところで,ルーブル美術館の別館をSANAAが担当し,ポンピドゥ美術館の別館を坂茂が担当する,というのは,誇らしいことに思います.



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Basel近郊のWeil am RheinにあるVitra Campus の入口に,
Herzog & de Meuron によるVitraHausがオープンしました.
これは,Vitra社の家具を売る店舗です.

五角形の家型をモチーフに,トンネル状の家型を積み重ねることによって,建物を形成しています.
特に,トンネル同士の重なる部分や隙間が,面白い空間になっています.

躯体は現場打ちコンクリートですが,
壁と屋根の色は黒で統一されており,
屋根は金属板,壁は手の跡の残る左官のような仕上げになっています.

真っ白な室内から家型に区切られて周囲の緑が見える様も素敵です.
Vitraという世界的家具メーカーの展示場が,家の形をモチーフとして積み重なっている,
しかもそれが,色の統一やぬるっとしたトンネル状の形状によって,抽象的に昇華されている
というコンセプトも面白いですし,
中の家具も見ているだけで楽しいので,オススメの場所です.





VitraHaus.jpg


Renzo Piano設計のFondation Beyelerにて,Jean Michel Basquiat展.

バイエラー財団自体は2度目.バーゼル近郊の美しい美術館です.
緑に囲まれた中に,そっと立ち,建築として激しい主張をする訳ではなく,
それでも壁の質感や,屋根の光の通し方に,細やかな息遣いを感じることができます.
流石レンゾ・ピアノ,といったところでしょうか.
BernにPaul Klee Museumがあり,
これも行ってみると配置がよく考えられていて悪くない美術館ですが,
やはりガルバリウム鋼板仕上げが気になってしまうので,
Fondation Beyelerの方がより完成度が高いように思います.



バスキアの生きたのは1960-1988ということで,今年は生後50周年であるようです.
最初に彼の名前を見たのはどこかで見つけたポストカードの彼の写真でした.
なにしろ顔がかっこいい.80年代のNYのイメージそのもの.しかも名前もかっこいい.
落書きから始まった彼の作品も,見ると元気になります.
若さとか反骨精神とかアヴァンギャルドとか,そういう力強さ.


正直,Fondation Beyelerで見るよりも,
工場跡地のような煉瓦のあらわしになったようなアートギャラリーで観たい.
やはり,これはNYの風なのであって,成熟をよしとするヨーロッパの風土には馴染まない気がします.
それでも,バスキアを評価するだけの懐の深さがあることが,ヨーロッパの強みだな,とも思います.



同行した方が,こんなのただの子供の落書きじゃないか,と言っていて,反論もできない訳ですが,
私個人は,モネが好き,という人よりも,バスキアが好き,という人の方がずっと好きです.

年齢を重ねてきた所為か,最近では成熟ということの意味を感じるようになってきましたし,
ヨーロッパの成熟度に惹かれる点も多いのですが,
バスキアが好き,という感受性も持ち続けていたいものだと思います.





エッセンのかつての世界最大の炭坑跡地は,レム・コールハースのマスタープランに従ってフォスターによる Red Dot Museum(リノベーション)や SANAA によるアートスクールが建設されています.
それらの新しいものもさることながら,やはりかつての炭鉱施設の力強さは圧倒的な迫力があります.一日かけてゆっくり楽しんでもいい場所だと思います.



観覧車もあります.

essen.jpg



SANAAによるアートスクール.外壁を先に打設することで,外から見える型枠跡をきれいに揃えています.壁と床にアクティヴヒーティングが仕込まれています.(日本ですと確実に横引きと言われるような配管ですが.)壁にヒーティングを仕込むことによって,薄い壁厚を実現したそうです.インテリアの納まりもとてもきれいです.

zollverein.jpg


Frankfurt Ostend の Großmarkthalle の追加写真です.


Grossmarkthalle3.jpg




Grossmarkthalle4.jpg





敷地内にモックアップも作られています.

Grossmarkthalle5.jpg




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