
dvarchitectes & associes SA, 2012
dvarchitectes
Sionの駅前のバスターミナルです.
構造設計者が誰なのかちょっとわかりませんでした.
奇抜に見えますが,構造システムは単純で,柱の間の梁はしっかり通しています.
しかも,バスターミナルという用途の性質上からでしょうが,
柱はかなりきれいにグリッドに並んでいます.
柱の上部は片持ち部分もあるので剛接合にする必要があり,鉄板で処理しているようです.
屋根面を埋める複雑な形状の部分も,鉄板を挟み込んで接合しているようですね.
ざっと見た所,
3枚のリブが集まっている交点と,4枚のリブが集まっている交点があるようなので,
多分その接合の角度は規格化して,接合部分の丸い部材は共通部材にし,
交点の位置を動かしてみて形状を決めたのかな,と思われます.
各部材に挟み込んだ鉄板及び木材の長さは,パソコンから直接CNCに出力して作れそうです.
こういうものは,”複雑な新しい構造”という風に言われがちな気がしますが,
構造システムはなんら新しいことはありません.
この幾何を決めているのは,構造ではなく,寧ろ構法のように思われます.
接合部材の種類が沢山あると,お金もかかるし,
幾何を決める上で何らかの制約があった方が考えやすいから,
接合部の角度は一定にして,幾何を決めよう.
そしてできた幾何に対して,必要な構造成を確保しよう.
という風にプロジェクトは進んだのではないかな,と思います.
言ってみれば,構造システムからの発想はなく,
決まった幾何に対して,計算しただけ,とも言えます.
(勿論複雑な形状ですので,計算も手間がかかった筈ですが.)
構造設計者は,
構造システムや力の流れ方について理解し,アイディアを持っていることの他に,
その作られ方についてもよく知っていることが職能として求められています.
この場合は,鉄板を木で挟んで接合する,というような構法のアイディアを提供した,かもしれません.
構法は,お金と時間をかければ,かなりのことはできるのでしょうが,
それなりに効率的に,と思えば,既存の方法を知っていなくてはなりません.
そして,慣習的な方法は,文化によって少しずつ違います.
最近一部で流行っている(んでしょうか)複雑な形状のものを実現しようとすると,
現状では,まだ世界で始まったばかりの事例なので,
しばしば構造ではなく構法側のアイディアが求められがちです.
専門家としては,構造的なアイディアの方がつい面白く思えたりもしますが,
構法に関しても,色々な事例をストックしておくのが大事なようです.
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