オープニング曲は「鶏と蛇と豚」このMVが素晴らしかったので、アルバムも購入した。
このMVの何が素晴らしいって、AYA SATOさんのダンスがカッコいいとか、曲のビートがカッコいいとか、そんなことよりなにより、新宿のプロモーション映像だということ。新宿はどんどん変わっていってしまうけれど、私の知っている新宿の骨格が、そのゲニウスロキが、映像化されていて、それだけで泣きそうになってしまう。西新宿に降り立つ鶏と豚の霊、日本橋から現れお堀を登る蛇の霊。ケンタウロスの天使は銀座の和光の前にいる。そして3つの霊は新宿地下のスバルビルの眼で天使の前に集合する。
歌舞伎町から出発した椎名林檎は、ほんの隣、西新宿に本拠を移しただけに見えて、それは東京をまるっと表してしまう。そしてそれは、東京人の贔屓目だろうけれども、私の中の日本をもまるっと表してしまう。
新宿や東京は、人間味がないように言われることもあるけれど、本当は違う。ただそこで長く時間を過ごした過去があるというだけだけれど、その土地と深く繋がっている感覚があるし、霊魂ははっきりとあるのだ。
人間の欲を地底から召喚して、さぁ祭典(勿論東京オリンピックである)の始まりである。
さて、これがアルバム三毒史のイントロダクション。そこから、デュエット曲とソロ曲が交互に配されている。どの相手の男性も魅力的に聴かせるのが流石。今回は今のところデュエット曲の方が気に入っている。
次の「獣行く細道」は、紅白で聴いたけれど、アルバムやライブ映像で聴く方がずっとよい。
<大自然としていざ行かう><悴むだ命でこそ成遂げた結果が全て 孤独とは言い換へりやあ自由><無けなしの命がひとつ だうせなら使ひ果たさふぜ><誰も通れぬ程狭き道をゆけ>
「長く短い祭」これで浮雲さんの加工された声がどんどん好きになってしまった。椎名林檎曰くの炭酸声。わかる。でもHYDEバージョンも聴いてみたい。(私はHYDEも好きなので。)自由自在といった感じ。夏の歌。祭と言えばやっぱり夏だよね。<我らは夏よ>
そして、椎名林檎とトータス松本「目抜き通り」。銀座SIXの宣伝用の音楽だったらしい。最初そんなにピンと来ていなかったのが、ライブ映像を観たらぐぐぐっと来てしまい。これは自分で歌ってみると妙にすかっとするのだ。って難しいのだけど。目抜き通りというのは、英語で言うとメインストリーム。自分にとってはある意味のキーワード。<最期の日から数えてみて ほらご覧 飛び出しておいで 目抜き通りへ!>
こんな感じで、いいアルバムなのだけれど、するっと聴けてしまう不思議なポップさがある。王道で行きますよ、というか、粒揃えてますよ、というか。宇多田ヒカルのアルバムの「誓い」に当たるような曲が見当たらない。
因みに目抜き通りのMVは最近公開されたのだけれど、椎名林檎の外見が急におばさんになっていた。彼女は見た目が一定しないタイプなので、また変わるかもしれないけれど。なんか、大御所感とか、歌謡曲感が出てきている。
特に歌謡曲というのはその時の社会の魂のようなものを乗り移らせることがある気がして、椎名林檎は正にここ数年そういうモードに見える。多分本人もある程度意識的に。(宇多田ヒカルが休んでたんだもん、自分がやらなきゃしょうがない、みたいな。)宇多田ヒカルは、どれだけ多くの人の心を捉えることがあっても、時代に乗っても、個々人と別々に繋がるようなイメージがあって、ヘッドフォンで聴くのが似合うような。それに比べて椎名林檎は集合心理?に繋がるような、ライブが似合うイメージがある。いいじゃん、その覚悟。飛び出しておいで、目抜き通りへ。
その覚悟と社会を背負っているオーラのようなものがすごい。
東京オリンピックが楽しみ。
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