2000年に亡くなったエンリック・ミラージェスが,
Benedetta Tagliabueと組んでEMBTになる前,Carme Pinosと組んで1986-1992年に設計した,
バレンニャ市,市庁舎.
バルセロナから郊外電車R3に乗って1時間程の小さな町です.
行き方はここのブログに詳しいです.
電車の本数はとても限られているので,是非時刻表を調べて行きましょう.
因みに,現在の開館時間は,私の理解している所によると,
月曜日が 17:00-19:30,火曜日から金曜日が 09:00-14:00 だそうです.
電話して確認したのですが,向うが英語をほぼ話さなかったので,間違えているかもしれません.
市庁舎が夕方5時から7時半まで開いているというのは,
シエスタのある地域特有だな,と思います.
さて,私が行ったのは月曜日.電車の関係で15時前に着いてしまったので,
外観を粗方見た後,数軒しかないカフェの一つに居座って17時の開館を待ちます.
平日の昼間なのに,地域の人たちが集まって何やら話しています.
カタランを話さないアジア人なんて珍しいらしく,お菓子のサービスまで.
お洒落なカフェ,ではないけれど,田舎の喫茶店的な感じで,面白かったです.
さて,17時になると,どこからともなくわらわらと人が現れます.
受付のお姉さんは,「あ,さっき電話くれた人ね」という感じで,地下のホールの鍵を渡してくれ,
勝手に見ていいし,写真もOKとのこと.
かなりオープンな市庁舎です.
さて,建物は,4つのボリュームがずらしながら重ねられて作られています.
これがもう少し進むと,Herzog & de Meuron の Vitrahaus のようになるのかな,と思いますが,
それよりもずっと早くにこれを実現していたのは,流石です.
しかも,規模に見合っていて,とても気持ちよくできているのです.
飛ばしている部分は鉄骨造.それ以外はRC造です.
地下はホールになっていて,そこからずれた空間が楽しめるのですが,
各ボリュームのホールに面した側は,窓を開ける必要がないので,鉄骨トラス,
庭に面した側は窓を開ける為に,比較的大きな単純梁でがっしりと飛ばしています.
この窓には可動の木製ルーバー(フレームは鉄骨)がついていて,
その仕組みが結構単純なのにセクシーです.
鉄骨トラスは,アングルを組み合わせて作られています.
斜材の部分をアングルで作るのはよくあるやり方ですが,
ここでは鉛直材(ポスト)も二つのアングルを組み合わせています.
それを背面ではなくエッジで組み合わせることにより(平面で見ると45度傾いた正方形)
見えがかりとして背後の部材が見えず,かなり薄く軽く見えるようになっています.
時代や地域によることではありますが,
手の跡がはっきりと見える,洗練された,というよりも,職人的な,
愛らしい建物でした.
建築関係者であれば,バルセロナの観光に飽きたら,一見の価値はあると思います.
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