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スペイン旅行の目的の一つは,エドゥアルド・トロハのサルスエラ競馬場を見に行くことでした.
これは1935年-1936年に作られたコンクリートシェルの傑作です.
建築家はCarlos Arniches Molto + Martin Dominguez.場所はマドリードの郊外です.
スペインの内戦の為,オープンは1941年でした.

2005年に補修を終えて(?SIKAの情報では2008年に終わったことになっていますが),美しい姿でよみがえりました.2009年には文化遺産登録.
2020年のオリンピックがマドリードに決まれば,使用される予定だったそうです.
(周知の通り東京に決定しました.)

公式ウェブサイトはこちら

時期にも依りますが,金曜日の夜と日曜日のお昼に競馬が開催されています.
私が行ったのは,日曜日のお昼.
マドリード市内の地下鉄駅moncloaから無料送迎バスで行けます.



トラックから見たスタンドはこちら.




そして,背面から見たのがこちら.



これは,相当浮遊感があります.ただならぬ薄さの感覚があります.



ネットで見つけた断面がこちら.




柱ピッチは5m.片持ちスパンは12.8m.バックは一般部で7m.
先端部コンクリート厚さは5cm,支点で14cm.

台形錐のような形をした柱が支点となり,前面の張り出し部分をバックの鉄骨柱でひっぱることで安定させています.
その鉄骨柱は下部のチケット売り場空間の天井スラブを吊り上げ,無柱空間を実現しています.
(前面の屋根の素晴らしさに目を奪われがちですが,これもスマートな解で,気持ちがいいです.)


背面から寄って見たところがこちら.





ネット情報によると,この曲面はHP曲面なのだそうです.
HP曲面の特徴の一つに,直線をずらしていくことによって構成可能だ(よって型枠が作りやすい)ということがありますが,
ここでは型枠は曲面で作っているようですし,
吊り材の部分であきらかにエッジの角度が変わっているので,
デザインの着想としてHP曲面を用いた,というに過ぎないのかな,という気もします.
1930年代はまだ,特殊な形態を考えようとすると,
数式化された幾何学を頼りにしていくことになったのではないでしょうか.
(或いは,ガウディのように,実験・計測して形態を決定するか.)



特殊な幾何のついてまわる問題の一つに,端部の処理がありますが,
ここではこんな大胆なデザインを選択しています.



端のスパンは背後のスパンを伸ばし,更に端部をざっくりと切っています.
その理由は,今のところ私が理解している限りでは,
下部の平面(テラスのようなものが付け足されている)を覆いたいから,
というだけのようにも思えて,
その為に,実は,内部のスパンとは曲面の形態まで変えるというラフさがあるようなのですが,
(自分だったら厳格に同じ形態を繰り返してしまいそうです.)
この,心持の軽やかさ,おおらかさ,
そしてそういうラフさを凌駕する基本コンセプトの力強さは,
誰がどう見ても,傑作なのだなあ,と思わざるを得ません.



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