Anne Teresa De Keersmaeker のROSAS公演を観てきました.
演目は,
"Die Weise von Liebe und Tod des Cornets Christoph Rilke"
旗手クリストフ・リルケの愛と死の歌.
これから観ることがある人にまず言っておきたいのは,
必ず一度小説を読んでから観た方がいいということです.
以下ネタバレを含む感想を.
ROSASの公演を観るのは今回が三度目.
一度目はロンドンのテートモダンのTANKのオープニング時.
この時はSteve Reich のFASEでした.
ROSASの名前も知らず,たまたまやっていたのを観て,鮮烈な印象を持ち,
流石ロンドン,流石テート,と思ったのでした.
ケースマイケル自身は踊っていなかったと記憶しています.
二度目は去年.BaselのKaserneにて,友人に誘われてBach Partita.
当日券ぎりぎりで入って,最後列.それはそれで,舞台全体がよく見えます.
この舞台が大変よくて,この時,ROSASの名前を記憶しました.
ケースマイケル氏ともう一人の男性とバイオリンの舞台.
無音のダンス,バイオリン,そしてバイオリン付きのダンス.円環.
そして今回.
リルケの短編をモチーフにした舞台.
前回が最後列だったので,今回は2列目を取ってみました.
東京と違ってチケットを取るのが楽なのがスイスのいいところ.
2列目は演者と至近距離です.
最初は男性のみのダンス.次に小説が映写されて,フルートの演奏.
(フルートがこんなに現代音楽を吹けるなんて知りませんでした.武満徹の尺八のように.)
そして,フルートの演奏に合わせて,先ほどの男性とケースマイケルのダンス.
男性が退場して,ケースマイケルが短編を全編朗読しながら踊る.という構成.
映写はドイツ語と英語の二言語ですが,
朗読は全てドイツ語なので,ドイツ語圏でしか演じられないかもな,と.
ドイツ語が少しでもわかってよかった+小説を読んでおいてよかった.
今回は小説ベースですので,物語がはっきりとあります.
トルコへ戦争へ向かう道すがら,
フランス人と出会い仲良くなり,別れ,旗手になり,
その後着いた村で侯爵夫人と懇ろになり,
その夜火事に巻き込まれ,敵陣に入り込んで四方八方から刺されて死ぬ.
というのが大まかなストーリーです.
その一瞬一瞬を,自由に,しかし実は綿密な計算の元に,動く.
彼らの舞台を見ると,いつも生きるということ全体について考えてしまいます.
自らの身体をコントロールすること.
一人で表現できることと,二人いないと表現できないこと.
静止も含めた瞬間の動きが美しいだけでなく,
動きの軌跡が美しい絵になっているということ.
それぞれの公演の連なりも,また一つ大きな絵になっているのでしょうか.
前列で観て一つ驚いたことは,ケースマイケルが年を取っていたということ.
男性ダンサーが比較的若かったので,余計にそう見えたのかもしれません.
動きが鈍いということは全然ないのですが,首や肘の皺に,確実に年齢は表れていて.
って,57歳ですから,当たり前なんですが.
そして,その年の離れた二人が並ぶ違和感が,
公演を観ている内に消えて行ったのも印象的でした.
ただ二人の個人が,互いの引力の中で動いている様子.
そして,ケースマイケルの声.強く低い声.
ドイツ語は,やはり男性的な言語だと思わざるを得ませんが,
少しドイツ語が好きになれた気もします.
薔薇の詩を墓碑にしたリルケですから,
公演後に薔薇の花を手渡されていたのは粋でした.
何れにせよ,観に行ってよかった.
ROSASのDVDは以前に購入していたので,
勢いでWim Wenders のPinaを購入してしまいました.
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