ゆっくり目に起きるペルーの日曜日の朝.道を走っている人が沢山いる.何かのレイスだったのだろうか.ホテルのWiFiが通じない.まあそんなこともあろうかとは思ったが,ここでは電話も通じないので,本当に隔離されたような気分になる.さらに,コンセントプラグのC型が使えず,A型オンリーである.これはまずい.ホテルでくれた地図がまるで使えない代物だったので,というか,リマは大きすぎて観光用の地図が準備できないのだろうが,電子地図が命綱なのだ.取敢えずアダプタを入手せねば.
ホテルをチェックアウトしようとすると,ネットが通じないのでカードが使えません.ドルでの支払いならできます.ATMでおろしてきてくれませんか?と言われる.ユーロの現金は持ってきていたが,ドルは持ち合わせが無く,ドルを使うのは癪な気がしたので,空港で降ろしたソルの現金で支払う.既に心もとない.ホテルの前の銀行で降ろしなおす.
観光客が全員行くというLarco Marに行く.電気屋があると聞いたので.街の大きさの感覚がわからなかったが,歩いてみると30分くらいで着く.歩いてどこかに辿りつく,という感覚は悪くない.道中は海岸の道を行く.リマの海岸はとても印象的な崖だ.海蝕崖らしい.切り立った壁がずっと続く.美しいが,このお陰で街と海とが分断されている.海岸だが,海が冷たい為に雨が少ないのだとか.通りで乾いている訳だ.
目的地に着いてみると,概ね服やとレストランしかない小さなモールだった.電気屋の場所を尋ねるが,まず英語が通じない.コンセントはここだよ,とか親切に教えてくれるのだが,欲しいのはそれじゃない.何故だかこちらの英語も妙にたどたどしく単語の羅列みたいになるから不思議だ.辛うじてapple storeを見つける.きっとここはお洒落モールなんだろう.なんとかA型コンセントのUSBアダプタを入手.A型コンセントは日本でも使えるから,まあいいか.取敢えず充電できることになって安心したので,海を見ながら朝ごはん.コーン粉を練ってバナナの皮で包んだTAMALを頼む.美味しい.そして,期待していなかったが,コーヒーの味がまともだ.海とコーヒーと美味しい食事で,随分気分がよくなる.
海辺なので海まで降りてみようかと思ったが,崖の途中までしか降りられないようになっている.今日の夜には友人が到着するから,友人の興味の無さそうなものを潰しておこうと思い,内容がよくわからない断崖の美術館に行ってみることにする.少し距離がありそうだったので,タクシーを使ってみる.流しのタクシーがある所が日本っぽい.美術館は割と辺鄙な場所にある.降りる時に運転手さんが,30分後に迎えに来てあげるよ,あそこの道路の所で待っている,と言う.言ったのだが,スペイン語がわからないので,入り口の場所を教えてくれていると思い,そちらに歩き出してしまう.運転手のおじさんが,戻ってきて,違う違う!入り口はあそこ!30分後にここで会おう,と言いなおしてくれる.私は海に行くつもりだったので,礼を言って断る.
Lugar de la Memoria, la Tolerancia y la Inclusion Social という美術館.
Barclay & Crousse Architecture という建築家の2010年の作品らしい.崖の中に入り込んだように建っている.大きな建物ではないが,その建ち方やコンクリートの黄色さ,ディテールの荒さと構成のダイナミックさが特徴.空気を遮断しつつ光を取り入れる工夫があちこちにされている.建物の中もスロープや段差が多用されていて,順路に従うと最後は屋上に出て海を眺めるようになっている.展示内容は1984年からのペルーの政治体制や社会の変遷のようだったが,スペイン語のみなのでよく理解できず.ただ,30年分の内容が既に一つの美術館になるくらい,この国は激動の時期をつい最近まで過ごしてきたのだなと思う.因みに入館時にパスポートを見せる必要があるが,無料.みな熱心に展示を見ていて,観光客らしい人はあまり見当たらなかった.理解していない自分が申し訳なくなる.
美術館の人に,海に行きたいのだが,と尋ねると,行けません,と答えられる.何故?と聞くと,危険なのだと言う.でも人がいましたよ?とさらに聞くと,英語はうまく話せませんが,危険なんです,と答えられる.よくわからなかったので,礼を言い,海の方角へ歩くことにする.
なるほど.確かに危険だった.兎に角,車道しかないし,車がひっきりなしで,しかも走るスピードがとても早い.イメージとしては高速道路を歩いているような感じ.リマは,町と海岸とが崖によって本当に分断されていて,車でアクセスする以外の道がとても限られているのだ.たまたま同じように道を歩いて海岸に行こうとしていたカップルと一緒に,今だっ!渡れ!などと言いつつなんとか海岸まで歩く.石海岸だ.遠くにはサーファーもいるようだったが,人気は少ない.まだ20度くらいの春だし,そんなものか.カップルに礼を言って別れ,石海岸に腰掛けて,海を見ながらしばし読書.曇っているのにじっとしていると日差しは強い.コートを被って日陰を作り,熱い石の上に寝転がりながら本を読む.海の音が聞えるし,気持ちがいい.時々石を海に投げたりする.因みに気持ちはよかったが,この時頭皮が日焼けして大変なことになった.
帰りはどうしたものか,取敢えずもうちょっと先まで行って,捕まえられたらタクシーを捕まえようか,と出発する.暫く歩いてみると,海に突き出している部分があったので,行ってみる.蟹がうじゃうじゃいる.そこから振り返ってみると,もう少し行った所に,歩いて登れるスロープがあるようだったので,安心する.幾つも道路を渡る橋の計画はあるようだったが,まだ建設途中のものばかりで,観光地区範囲で利用可能なのはこの橋だけのようだった.
500m程登る.地図のGPSが切れて,現在地がよくわからなくなるが,適当に歩いていたら素敵なカフェがあったので入る.そこでWiFiが繋がる.店員の着ているTシャツがかわいく,コーヒーもおいしそうだったが,暑かったのでジンジャージュース.美味しい.取敢えず素敵なカフェさえあれば気分は上々だ.
そこから織物美術館が近かったので,行ってみようかとも思ったが,考えを変えてバランコ地区にタクシーで行く.この頃には色々慣れてきている.バランコ地区にあるMario Testino Museum へ.マリオテスティーノは有名なVogueのペルー人写真家だそうだが知らなかった.チケット売り場の人が突然日本語を話してきたので,一瞬わからなくなる.リマに着いて以来,初めて言葉が通じた.気が楽になる.そして,展示が素晴らしかった.後半の民族写真も興味深くはあったが,大量のファッション写真が怒涛のように使われていて,本当に圧巻だった.お洒落したいなと思わせられた.狭い美術館ではあるが,鏡張りの部屋で,かっこいいアフロの女性が一眼レフで写真を撮っていたのが様になっていて,つい,あなたの写真を撮っていいですか?と尋ねて撮らせて貰う.彼女は嬉しそうに,私のカメラでも撮って,と言った.
満足して,バランコ地区をぶらぶらする.18時くらいでもう既に暗い.赤道に近いんだった.お店が閉まりかけるのを気にしながら,幾つかのセレクトショップを覗く.友人の出産祝いを購入する.日曜日で閉まっているお店も幾つかあったのが残念.嘆き橋の辺りは観光客もいっぱい.この壁画クールだろ?と通りがかりの人に自慢される.壁画がクールかどうかはともかく,こういうお洒落な地区があるから,都会は好き.
バランコ地区は海にも面している.太平洋の夕焼け.日本と反対側.日が落ちて暗くなってきたので,タクシーでミラフローレスまで帰る.流石に一人で乗り合いバスは怖くて乗れない.
ホテルにチェックイン.魚が食べたかったので,美味しいレストランを聞く.日曜日もやっていたAlfrescoに行く.初セビーチェ.美味しい.ワインも頼んだのだが,値段の割りに味もイマイチで,ペルーでワインを飲むのはやめようと思う.ワインに関しては,イタリアのような訳には行かないね.一品でもうおなかがいっぱいになってしまい,会計を頼む.ウェイターさんが,一品だけー?と聞いてきたが,無理はしない.
ホテルに戻って疲れてうとうとしていると,友人がやってきた.ほぼ一日がかりのフライトの末に.60歳からの外国語修行,を読みながら.
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