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アルマジロ人間の盗作で青木淳さんが訴えられた,という話が広まったのは,2006年のことだったのだろうか.その時少し話題になって,その後は忘れていた.

今,検索をかけてみると,青木淳さんの側の文章が見つかる.
青木淳さんによる2006年末の『「アルマジロ人間」について』
訴えた側の元所員の小野弘人さん(現 atlier Nishikata)の主張は,当時はウェブサイトがあったようだが閉鎖されている.

そういえばつい最近も,表参道に建つファッションビルのファサードに関して,著作権問題が起きていた.ファサードの素案を作った人がクレジット表記を求めたのに対して,竹中工務店がつっぱねた.

会社に勤務している間に作り出した業績は会社のもの.というのは,青色LEDの発明,404特許の裁判とも通じるのかな.


私の感覚では,建築業界というのは,多分よい意味でも悪い意味でも,とても遅れている業界で,あまり著作権のようなものとは馴染まない.例えば素晴らしい工法を誰かが開発したとして,それは勿論賞賛されるべきとも思うが,一方で,広まってこそ,という気もする.
それに,建築は必ずチームワークだ.どうしても,本質的に,他者との協働が含まれてしまう.(逆に,そのことをわからずに,協働者を道具のように扱う建築家には,私は苦手意識を持ってしまうし,常に責任の所在を追及してばかりの打合せにはほとほと辟易する.)もやっと,みんなで,何かを作り出していく作業なのだ.

「建築っていうのは,おおらかなものなんだよ」

何れにせよ,この訴訟で青木さんも小野さんも痛みを受けただろうことは想像に難くない.今,青木さんの文章を見る限りは,青木さんの言い分は納得できる.それでも訴訟を起こさざるを得ない程の思い入れが,小野さんにはあったのだろう.


建築というものは,本質的に楽天的で健全なもので,
楽天的で健全なもの,に,建築の魂みたいなもの,は流れていきやすいのかもしれない,とふと思う.



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ミース・ファン・デル・ローエのファンズワース邸は傑作です.
でも,今はあれは,例えば今のスイスでは実現できないだろうな,と思います.

建設技術的に,という意味ではありません.当時よりも鉄骨の技術はさらに進んでいます.
でも,あんな断熱のない建物は,現在のスイスではほぼ許されないでしょう.

我々が子供の頃は学校に冷房はありませんでした.
今は,冷房がない,ということは,劣悪な環境,ということになるでしょう.
昔の人が耐えられたものに,今の人は耐えられない.
それは,気温が上がったというようなことよりも,
社会的に標準とされるものに人間の身体(或いは脳)が慣れていってしまう,
ということなんだろうと思うのです.

コルビュジエのユニテの頃,家に風呂を持っている人は10%以下だったそうです.
ほんの60年前のこと.
今,風呂がない住宅は多分先進国では成立しないでしょう.


ファンズワース邸の素晴らしさの一つが,
建築の本質を削り出してそれだけで建築を構成した,ということだとして,
それがなくては成立しない,ということであれば,
断熱や空調をはじめとした設備も,以前にもまして建築の本質になっているということ.
今の時代に,建築の本質を削りだした建築,というのは,
きっと設備に関しても,統合されて建築と一体になっているものなのでしょう.

そういうものを,見てみたい.






春はイベントが多くなります.
Office Haratori のレクチャーを聞いてきました.

Office Haratori(原鳥) は,ゼノ・フォーゲル,原奈穂子,ヨルグ・シューパーによるチューリヒのオフィスです.
今回のレクチャーでは,牛小屋を改築した別荘のプロジェクトを紹介していました.

大きなプロジェクトではありませんが,構造まで含め,細かいところまでとても丁寧に設計されていて,羨ましくなるほどでした.

行ってみたいです.

いいプロジェクトの話を聞いて,自分も頑張ろうと思えた,とても楽しい時間でした.


アルヴァロ・シザのレクチャーを聞いてきました.
現在82歳.言わずと知れた,ポルトガル建築界の巨匠です.

長い事続けてやっているエヴォラ近郊のキンタ・ダ・マラゲイラの集合住宅について.
とても低い声でゆっくりと話す英語は,正直とても聞こえにくくて,
少しでも気を抜くとすぐに何を話しているのかわからなくなってしまうのだけれど,
それでもすごくチャーミングな人でした.
スライドに風景のスケッチや写真が多く,また自分の見える位置のスライドの解像度がとても低かったのですが,またそれが魅力的.

勝手な妄想ですが,ずっとシザの周りに暖炉が見えている気がしました.
或いは,真夏の海の見える日陰.
何人かの気のおけない仲間と,談笑しているような.
ゆったりとしていて,言葉は多くないけれど,
すごく誠実で,丁寧に,着実に,ものを積み重ねていく,そういうイメージ.
そういう,その人のオーラのようなものは,映像ではよく伝わらなくて,
自分はミーハーなので,その人が話すのを直に見るのが好きです.

レクチャー後の質疑は,聴衆との暖かな会話のようでとても印象的でした.
30年前と今とでは建築に関する状況はどう違うと思いますか,という質問に,
今の方が快適だけれど自由が少ない,今は守らなくてはいけない決まりが沢山ある,
というようなことを言っていました.
あともう一つ印象的だったのは,質問の内容は忘れてしまいましたが,
建築家は,hope と enthusiasm で困難を乗り越えていくんだ,と言っていたこと.


シザの建築は,リスボンとポルトで幾つか観たことがある程度ですが,
もっと観てみたい,と思わせる人でした.



3年前,ザハ・ハディド(訃報に驚きました.ご冥福をお祈りいたします.)がVitraで講演をした時,
英語が早すぎてちっとも内容はわからなかったけれど,
やっぱり話し方がとても印象的だったことを思い出したりしながら.





Sergison Bates architectsのJonathan Sergison氏の講演会に行ってきました.
このオフィスは,ロンドンベースで,チューリヒにもオフィスがあり,幾つかスイスでもプロジェクトをやっているそうです.Sergison氏自身は現在メンドリジオで教鞭を取っているようです.


彼のプレゼンは,彼らのロンドンやジュネーブ,アントワープ,ウィーンでのプロジェクトを見せながら,彼がどういう点に注意を払って設計を行っているか,を話していました.

プロジェクトひとつひとつについて順番に説明する,のではなく,あるテーマ(例えば「建物と建物の間」)に沿って,関連した写真を見せていくやり方で,その建物を理解しようとしてじっくりスライドを見ようとすると,すぐに次のスライドに移ってしまう,捕まえようとすると逃げてしまうようなプレゼンでした.実際彼は何度も,間違えて?故意に?次のスライドにクリックしては戻るということをしていて,それもそういう印象を作る一因だったかもしれません.

彼らの建物の特徴は,平面の形が矢鱈と複雑なことです.ひとつには,彼らの実務経験がロンドンの住宅から始まっていて,それは(ヨーロッパ人には)とても小さく,平面を最大化するには敷地に合わせた格好にならざるを得ない,畢竟不整形になる,ということから来ているのかもしれません.
外形,ファサードについては,町との調和,歴史の参照(特にロンドンのタウンハウス)について話していました.

ディーナー・ディーナーの長方形だけでできている平面を対照に挙げて,彼らがどうしてこんなにきっちりと設計するのかわからない,と言っていました.或いはオルジャッティが君の設計はアナログだと言うけれど,どこがそんなにアナログなんだろうか,とも.因みにプレゼンに使われた図面は手描きでした.ただ幾つかのヴィジュアリゼーションは普通にCGで使われていたので,敢えて手描きの図面をプレゼンしたのかもしれません.
プレゼンは英語で行われました.どうにも,言っている内容とやっていることがずれているように感じられました.ブリティッシュイングリッシュに対する私の勝手なイメージかもしれませんが,アイロニカルに,婉曲的に,ものを言っていて,その機微を私が汲み取れなかったのかもしれません.

断面がスライドに顕れることはなく,完全に平面で設計を行っているようでした.レクチャー後に,平面には不整形が多用されているけれど,断面は鉛直ばかりなのか,と聞いたら,今のところそうだね,と言った後,用事があるからと言ってどこかに行ってしまいました.

プレゼンの仕方も含め,分裂症的な印象の残るプレゼンテーションでした.


ちょうど90度について考えていた折でもあり,こういう設計のやり方について興味深かったです.
長方形平面は,少なくとも直方体の家具を置くなどの意味では「効率的」です.そして,施工の上でもやりやすい.でもそれは,私達の世界の把握の仕方が,直交座標系に依っているからなのではないだろうか.例えば毎回,例えばその壁を基点にしたローカル座標系で考えるなら,全く別の構築があるのかもしれない.などと考えていたのでした.




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