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建築の設計をしていると,
あらゆる角度の中で,90度だけが特権的な位置を確立しているように思えます.
360度を割り切れる,というのは,平面を埋め尽くすという点で大事な要素ですが,
60度や120度,72度でもそれはいい訳です.

でも,90度が重用される.
それは,どうしてだろう.

90度の特異性は,水平・鉛直にあるということはあると思います.
力学的に,重力が「鉛直」方向に働いているので,
効率的に柱を立てようとすると,鉛直な柱に利点はあって,
床が水平(そうでないとモノが転がります)とすると,90度が表れてくる.
超高層などになれば,力学的により難易度が高いので,
より90度が表れやすくなります.

ただ,平面に関しては,本当は90度でなくてもいい筈.

「まっすぐな壁」に対する要請があるとして,
六角柱の空間が基本にならないのはどうしてだろう.
例えば蜂は六角柱の空間に暮らしている訳です.


図面を描く時,基本的にはみなXY直交座標でものを考えます.
そういうことが影響しているのだろうか.

実際,本棚の界壁が60度だったら,ちょっと使いづらい.
それは本が直方体だから.
冷蔵庫は案外いけるかな.
お風呂も大丈夫そう.


90度からの自由.




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チューリヒ近郊の町キルヒベルクに計画されている,リンツとシュプリュングリのチョコレートミュージアムのコンペでした.
今年の1月に結果が出て,バーゼルの建築事務所 Christ & Gantenbein が勝利しました.

記事はこちら

現在の所,80Mil. CHF 程度の計画のようです.


因みに,クリスト&ガンテンバイン事務所はバーゼル市立美術館の拡張計画を手がけている事務所で,もうすぐ新館がオープンします.工事現場を一度見せてもらいましたが,明快な空間構成になっていて,好感が持てました.プレファブスラブの収まりがきれいでした.




マドリッドのバラハス空港(正確にはアドルフォ・スアレス・マドリード=バラハス空港)は
ターミナル4が2005年にリチャード・ロジャースによって設計されました.
ヒースローのターミナル5と同じ設計者です.

これを観るために,わざわざ遠出をしてきました.(私が使ったのはターミナル1でしたが.)



成田の残念さは言うまでもありませんが,
空港で残念なことの一つに,出発の空間は,しばしば大空間で構成され,
旅がこれから始まるわくわく感を演出しているのですが,
到着の空間は,そっけないものであることが多い,ということがあります.
基本的に,到着空間は滞在時間も短めですし,
垂直に出発動線と到着動線を分けようとすると,
どうしても出発動線を上に持ってきてしまうためです.
その結果,ゲートをくぐらないとその空間が味わえない,ということはしばしばあります.

ところがマドリッド=バラハス空港では,吹き抜けが多用され,
鉄道駅を降りた所から,出発空間を部分的に味わうことができるようになっています.
これは,なんだかとても嬉しい気持ちになりました.

空間構造自体は,2方向曲面を波のように連続させています.
鉄骨造で,仕上げは木材.
傑作!!というほどではないですが,とても気持ちのいい空間になっています.
もしかして,断面がMの字のように見えるのは,マドリッドのM,だったり...?



因みに,今回バルセロナのエル・プラット空港も使いました.
こちらは2009年オープン.設計はバルセロナ出身のリカルド・ボフィル氏.
正直ノーマークで,着いたら以前のくらーい空港ではなくなっていてわたわたしてしまいました.
明るく開放的で,到着の際にも免税店が利用できる,便利な空港.
ただ,所謂ガラス空間という感じで,色も白と水色.
あんなに素敵な空の青を持っている場所の空港なのだから,
もう少し癖があってもよかったのではないかしら,と思ったりもしました.



スペイン旅行の目的の一つは,エドゥアルド・トロハのサルスエラ競馬場を見に行くことでした.
これは1935年-1936年に作られたコンクリートシェルの傑作です.
建築家はCarlos Arniches Molto + Martin Dominguez.場所はマドリードの郊外です.
スペインの内戦の為,オープンは1941年でした.

2005年に補修を終えて(?SIKAの情報では2008年に終わったことになっていますが),美しい姿でよみがえりました.2009年には文化遺産登録.
2020年のオリンピックがマドリードに決まれば,使用される予定だったそうです.
(周知の通り東京に決定しました.)

公式ウェブサイトはこちら

時期にも依りますが,金曜日の夜と日曜日のお昼に競馬が開催されています.
私が行ったのは,日曜日のお昼.
マドリード市内の地下鉄駅moncloaから無料送迎バスで行けます.



トラックから見たスタンドはこちら.




そして,背面から見たのがこちら.



これは,相当浮遊感があります.ただならぬ薄さの感覚があります.



ネットで見つけた断面がこちら.




柱ピッチは5m.片持ちスパンは12.8m.バックは一般部で7m.
先端部コンクリート厚さは5cm,支点で14cm.

台形錐のような形をした柱が支点となり,前面の張り出し部分をバックの鉄骨柱でひっぱることで安定させています.
その鉄骨柱は下部のチケット売り場空間の天井スラブを吊り上げ,無柱空間を実現しています.
(前面の屋根の素晴らしさに目を奪われがちですが,これもスマートな解で,気持ちがいいです.)


背面から寄って見たところがこちら.





ネット情報によると,この曲面はHP曲面なのだそうです.
HP曲面の特徴の一つに,直線をずらしていくことによって構成可能だ(よって型枠が作りやすい)ということがありますが,
ここでは型枠は曲面で作っているようですし,
吊り材の部分であきらかにエッジの角度が変わっているので,
デザインの着想としてHP曲面を用いた,というに過ぎないのかな,という気もします.
1930年代はまだ,特殊な形態を考えようとすると,
数式化された幾何学を頼りにしていくことになったのではないでしょうか.
(或いは,ガウディのように,実験・計測して形態を決定するか.)



特殊な幾何のついてまわる問題の一つに,端部の処理がありますが,
ここではこんな大胆なデザインを選択しています.



端のスパンは背後のスパンを伸ばし,更に端部をざっくりと切っています.
その理由は,今のところ私が理解している限りでは,
下部の平面(テラスのようなものが付け足されている)を覆いたいから,
というだけのようにも思えて,
その為に,実は,内部のスパンとは曲面の形態まで変えるというラフさがあるようなのですが,
(自分だったら厳格に同じ形態を繰り返してしまいそうです.)
この,心持の軽やかさ,おおらかさ,
そしてそういうラフさを凌駕する基本コンセプトの力強さは,
誰がどう見ても,傑作なのだなあ,と思わざるを得ません.



2000年に亡くなったエンリック・ミラージェスが,
Benedetta Tagliabueと組んでEMBTになる前,Carme Pinosと組んで1986-1992年に設計した,
バレンニャ市,市庁舎.
バルセロナから郊外電車R3に乗って1時間程の小さな町です.

行き方はここのブログに詳しいです.
電車の本数はとても限られているので,是非時刻表を調べて行きましょう.

因みに,現在の開館時間は,私の理解している所によると,
月曜日が 17:00-19:30,火曜日から金曜日が 09:00-14:00 だそうです.
電話して確認したのですが,向うが英語をほぼ話さなかったので,間違えているかもしれません.
市庁舎が夕方5時から7時半まで開いているというのは,
シエスタのある地域特有だな,と思います.

さて,私が行ったのは月曜日.電車の関係で15時前に着いてしまったので,
外観を粗方見た後,数軒しかないカフェの一つに居座って17時の開館を待ちます.
平日の昼間なのに,地域の人たちが集まって何やら話しています.
カタランを話さないアジア人なんて珍しいらしく,お菓子のサービスまで.
お洒落なカフェ,ではないけれど,田舎の喫茶店的な感じで,面白かったです.

さて,17時になると,どこからともなくわらわらと人が現れます.
受付のお姉さんは,「あ,さっき電話くれた人ね」という感じで,地下のホールの鍵を渡してくれ,
勝手に見ていいし,写真もOKとのこと.
かなりオープンな市庁舎です.





さて,建物は,4つのボリュームがずらしながら重ねられて作られています.
これがもう少し進むと,Herzog & de Meuron の Vitrahaus のようになるのかな,と思いますが,
それよりもずっと早くにこれを実現していたのは,流石です.
しかも,規模に見合っていて,とても気持ちよくできているのです.

飛ばしている部分は鉄骨造.それ以外はRC造です.
地下はホールになっていて,そこからずれた空間が楽しめるのですが,
各ボリュームのホールに面した側は,窓を開ける必要がないので,鉄骨トラス,
庭に面した側は窓を開ける為に,比較的大きな単純梁でがっしりと飛ばしています.
この窓には可動の木製ルーバー(フレームは鉄骨)がついていて,
その仕組みが結構単純なのにセクシーです.

鉄骨トラスは,アングルを組み合わせて作られています.
斜材の部分をアングルで作るのはよくあるやり方ですが,
ここでは鉛直材(ポスト)も二つのアングルを組み合わせています.
それを背面ではなくエッジで組み合わせることにより(平面で見ると45度傾いた正方形)
見えがかりとして背後の部材が見えず,かなり薄く軽く見えるようになっています.

時代や地域によることではありますが,
手の跡がはっきりと見える,洗練された,というよりも,職人的な,
愛らしい建物でした.

建築関係者であれば,バルセロナの観光に飽きたら,一見の価値はあると思います.


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